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2008.05.12

最近の読書とサラエボの映画

須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)須賀敦子全集 第1巻 (河出文庫)
須賀 敦子

河出書房新社 2006-10-05
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須賀敦子の訳書は読んだことがあったが、この人の日本語はほんとうにきれいだと思う。
彼女が外国文学を専攻するようになったとき、彼女の父上は彼女の日本語が損なわれることを危惧して森鴎外の「即興詩人」を何度も読むように言ったというくだりがある。自分の育った環境と別の文化を語るということは、まず自分が母語(それに等しい言語)への深い造詣がないと不可能だということがよく言われるが、この人のイタリアについての文章を読むとそれを実感する。旅とは違う、その地に根を下ろした言葉は一つ一つ、重い。


映画「サラエボの花」
を見た。
戦争から10数年。昨年訪れたサラエボは、傷跡が残りながらも美しい風景が広がり、平和になったからか赤ちゃんがたくさん、夜の街は賑やかで、しかしどこか人や街のどこかに残る何かもの悲しい街だった。それはそのはずで、その顔の下には忘れることなどできるはずのない痛みや傷や思いが、みんなの中に残っているのだろう。争いが残すのは、一般人への傷でしかない。それは平和になっても、誰も消すことができない。やりきれない思いを抱えたまま人は生きていくことを強いられる。手足の長い体格のいい高校生たちを眺めながら、この子たちが戦争を体験したのかと思うと、何とも陰鬱な気分にさせられる。自分の平和への鈍感さも含めて。
これから、自分の生い立ちに苦しみ、やりきれない諍いもあるだろうけれど、母娘に強く生き続けてほしい。

on the southern hill of Sarajevo

映画にはバシチャルシャでトルコ風コーヒーを飲むシーンが出てくる。シーンは冬なので私が見た夏の風景とは違うのだが、平和になったと主人公が惹かれあう人と語り合う。
turkish style coffee in sarajevo

サラエボ、2007年7月。Photo:FinePixF10

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